『歌ことば歌枕大辞典』新入荷いたしました
久保田淳ほか編 2014年 角川学芸出版
私たちの祖先はこの国の自然に育まれ、それを愛し、歌いながら文化を築いてきた。歌枕は幾多の古人に愛され、歌われてきたこの国の名所であり、旧蹟である。それは単なる自然というよりは、歴史的自然、文化遺産ともいうべきものである。それら個々の歌枕を解説し、その定着の過程を追尋することは、とりも直さず日本の風土を考え、歴史・文化を学ぶことを意味するに違いない。そしてそのような関心のあり方は、環境破壊が急速に進む現在、すべての人々に切に求められることである。
現在の低迷する社会において、人々は目先の経済的効果に関して余りにも敏感である。それに比して、文化伝統をいつくしみ、これを守ることは、ともすれば閑却視されがちであることも否めない。これは極めて憂慮すべき事態である。今こそ日本の文学・文化の伝統を見直し、その遺産を次の新しい時代に伝えてゆく方策が立てられねばならない。そのことに思いを致し、私たちは和歌、短歌の文学伝統を考える一助として、『万葉集』から近世末期に及ぶ古典和歌を対象に本書を編んだ。この一冊に取り上げた歌ことば・歌題・歌枕の解説の一つ一つが、この国の文化・文学を考えるための積み石となり、足がかりとなるならば、編者としてこれに過ぎる喜びはない。


