新入荷!『国宝 信貴山縁起絵巻 調査研究報告書』
奈良国立博物館/編・発行
「国宝 貴山緑起絵巻」は、奈良の朝護孫子寺に伝来した、日本三大絵巻の一つに数えられる、平安絵巻の名品として知られる。本寺は、奈良県と大阪府の境にある宿貴山の中腹に所在し、古くから霊山として仰されてきた。聖徳太子が廃仏派と崇仏派の戦いの際に祈願して、毘沙門天を感得して勝利し、この山を貴山と名づけ、毘沙門天を祀ったのが寺の始まりである。
本絵巻の主人公である命蓮は貴山中興の祖と言われ、『扶桑略記」という仏教の歴史書には、延長八年(九三〇)、醍醐天皇の病気平癒のために、命蓮が加持析祷を行なったと記されている。寺伝によると、その霊験があらたかだったため、「朝廷を子や孫の代まで守護するように」という意味の寺名「朝護孫子寺」を賜ったという。
貴山朝護孫子寺に対する篤い仰のもと、十二世紀に制作された「貴山縁起絵巻」は、命運の験力をめぐる不思議なストーリーを卓抜な構成で紙面に配置し、見るものを魅了してやまない。
朝護孫子寺と奈良国立博物館の長年にわたる言頼のもと、奈良国立博物館と東京文化財研究所の共同研究事業の一環として、本絵巻の光学調査を実施することを許された。本稿は、本絵巻の光学調査の意義を、日本において絵巻物に適用された光学調査の歴史を振り返りながら、確認することを目的とするものである。


